見切り品販売を許さないセブンイレブン本部。裁判では「違法」で確定
最高裁での結果は、見切り品販売を容認する結果に
セブンイレブン加盟店が、賞味期限の切れそうになったおにぎりやパンの商品を値引きして販売しようとしましたが、セブイレブン本部は容認しませんでした。
理由は「セブンイレブンのブランド価値が下がるため」とのことでした。その結果加盟店は、裁判を起こしセブンイレブン本部と争うことになりました。
セブンイレブン加盟店と本部の対立
販売期限の迫った弁当などの値引きは、「見切り販売」と呼びます。これを行っていた加盟店側は、見切り販売をせずに本部の要請通りに弁当などを廃棄する(捨てる)と、 大きな損失が出て経営が圧迫されると主張。
セブンイレブン本部側は「安易な見切り販売は、中長期的に加盟店の利益にならない。発注精度を高めることがなによりも重要」と指摘。その結果対立した両者は、裁判を行うことになりました。
調査結果によると、一店舗あたりの廃棄される金額は、年間約530万円(1,100店の平均額で計算)分にのぼるとのことです。
530万円分の商品を捨てても成り立たせるセブンイレブンのビジネスモデルは、ブランド力を保つためとはいえ、エコではありません。ただ圧倒的な業界第一位を守り続けたブランド力は、こういったところから生まれているのかもしれません。
独占禁止法違反
2009年7月セブンイレブン・ジャパン本部が、販売期限の迫った弁当などを値引きして売った加盟店に値引きをさせないように強制させました。
そのことに対し公正取引委員会は、独占禁止法違反だと命令を出しました。セブンイレブンは、当時全国に約1万2千店舗を抱える圧倒的なコンビニエンスストアの最大手です。
公正取引委員会が指摘するセブン本部の違反行為の概要
「セブン-イレブン・ジャパンの取引上の地位は加盟者に対して優越していて、加盟店で廃棄された商品の原価相当額の全額が加盟者の負担となる仕組みの下で、推奨商品のうちデイリー商品に係る見切り販売を行おうとしている、
または行っている加盟者に対し、見切り販売の取りやめを余儀なくさせて、加盟者が自らの合理的な経営判断に基づいて廃棄に係るデイリー商品の原価相当額の負担を軽減する機会を失わせている」
セブンイレブン加盟店所には、値下げについて次のように書いてあります。
ここでいう乙とはセブンイレブンのフランチャイズオーナーのことで、甲とはセブンイレブン本部を指します。つまり契約上は、セブンの商品の値下げはオーナーが決めてよいことになっています。
しかし、それなのに約1万2千あるセブン店舗のうち、値下げに踏み切っている店はほとんどありません。それはセブンイレブン本部の圧力があったから、またはあり続けているからです。
セブンイレブン加盟店契約書 第31条
乙は、商品の販売小売価格を自らの判断で決定し、すみやかにこれを一定の様式による文書をもって、甲に通知するものとする
影響力の強い公正取引委員会
コンビニの商品価格は、セブンイレブン以外のコンビニ各社も「本部が価格を決定している」ことから、その影響は業界全体に及びました。
そしてこの頃からコンビニでは、スーパーや百貨店の閉店間際に見られるような「見切り品」の安売りを始めるお店が出てきました。私たち消費者側にはうれしいことですが、それはブランド力を守るためのコンビニ業界の神話が崩れた瞬間でした。
加盟店と本部で争われた裁判事例1
東京高裁での裁判結果
セブンイレブン・ジャパンのフランチャイズ加盟店のオーナーら4人が、消費期限の迫った弁当などを値引きする「見切り販売」を行わないよう本部に強制されたとして、同社に対して約1億3980万円の損害賠償を求め、東京高裁にて裁判を起こしました。
2013年8月30日東京高裁の裁判結果は、セブンイレブン本部の敗訴でした。
斎藤隆裁判長は、同社は全加盟店に一様に価格維持を指導し、原告らは「見切り販売をしたら店を続けられない」などと言われたと認定し、「事実上の強制があり、店側の商品価格を決める権利を妨げた」との判断を示し、同社に合計約1140万円の支払いを命じました。
セブンイレブン本部に命じられた賠償金額は、業界最大手のセブンイレブンからすれば、たいした金額ではないため痛くもかゆくもありません。気になるのは、セブンイレブンが失ったブランドイメージです。
今回の裁判は、セブンイレブン本部がセブンイレブンのブランド力を守るために行った争いですが、結果的には、ブランドイメージを自ら著しく傷つけ、失ってしまいました。
今回の裁判結果に対してセブンイレブン本部は、裁判結果を不服とし上告しました。
最高裁での裁判結果
2014年10月14日最高裁の裁判結果は、セブンイレブン本部の上告を棄却し、東京高等裁判所が下した違法判決が確定しました。
今回の最高裁判決について原告代表の須田氏は、以下のようにコメントを残しました。
「私の場合は3,600万円の損害請求に対して、280万円しか認められなかった。セブン本部は行政処分が出たあとも私たちに謝罪らしい謝罪もせず、現場の社員に責任を押しつけていた。
こういう判決なら、独禁法で負けても賠償金はこれだけかとなり、セブンへの抑止力にならないのではないか」
加盟店と本部で争われた裁判事例2
2008年5月から見切り品販売を行い、売上をアップさせたセブンイレブン福島塙店オーナーの鈴木一秀氏。その後も見切り品販売販売を続けていましたが、2009年7月に突然、本部から契約解除の通告を受けました。
2008年8月にセブン本部に対して、3,000万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴、9月には鈴木氏が経営していたセブンイレブンは閉店となりました。
鈴木一秀氏の裁判は地裁、高裁で敗訴し、最高裁でも9月25日上告棄却となりました。ここで誰もが思うことは同じではないでしょうか。
同じ業態で、同じような商品、同じ見切り品販売の訴訟なのにもかかわらず、最高裁判所での白黒の結果が分かれてしまうのだろうか…。セブンイレブン本部の圧力が司法の手にも伸びているのかと勘ぐってしまいます。
全国のセブンイレブン加盟店は、この先もセブイレブン本部の言いなりになってしまいそうです。公正取引委員会や司法には、もっとしっかりして欲しいです。
この結果について賛同者は、極力セブンイレブンの利用を控えることだけなのかもしれません。
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